圭を執れば、鞠躬如たり
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執圭、鞠躬如也、如不勝、上如揖、下如授、勃如戰色、足蹜蹜如有循、享禮有容色、私覿、愉愉如也、
圭を執(と)れば、鞠躬如たり。勝(た)えざるが如し。上ぐることは揖(ゆう)するが如く、下すことは授くるが如く、勃如として戦色。
足は蹜蹜如(しゅくしゅくじょ)として循うこと有り。享礼(きょうれい)には容色あり。私覿(してき)には愉愉如たり。
現代語訳
先生が君の使いとして外国に行かれる時、敬意のしるしである宝玉(圭)を君から預かった。先生は圭を持つのにうやうやしく身をかがめ、まるで圭が重くて持てないような風であった。持ち上げる時は手を胸の所まで上げて挨拶をする時ぐらいの位置までしか手を上げず、下げる時は人に物を手渡す時くらいの位置までしか手を下げなかった。顔色を変え、恐れおののいているかのようだった。
足は小またですり足になられた。君の贈り物を隣国の君に献上する礼の時は、なごやかに落ち着いた風であられた。君の代理としての務めが終わって、ご自身の個人的な拝謁の時には、いつそうなごやかで、楽しげであられた。
語句
■圭 天子が外国に使いをやる時に使者に持たせる玉。 ■鞠躬如 ■勝えざるが如く 重くて持てないように。■授くる 人に物を手渡す ■勃如 顔色が変わること。 ■戦色 恐れおののくさま。
■蹜蹜如 小また。 ■循う すり足。 ■享礼 主君からの贈り物を隣国の君に献上する礼。 ■容色 なごやかに落ち着いた様。 ■私覿 主君の代理をつとめおえて、今度は自分の私的な拝謁となる。 ■愉愉如 なごやかに楽しげである。
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