古者、民に三疾あり
■【古典・歴史】メールマガジン
■【古典・歴史】YOUTUBEチャンネル
子曰、古者民有三疾、今也或是之亡也、古之狂也肆、今之狂也蕩、古之矜也廉、今之矜也忿戻、古之愚也直、今之愚也詐而已矣、
子の曰わく、古者(いにしえ)、民に三疾(しつ)あり。今や或るいは是れ亡きなり。古えの狂や肆(し)、今の狂や蕩。古えの矜(きょう)や廉、今の矜や忿戻(ふんれい)。古えの愚や直、今の愚や詐(さ)のみ。
現代語訳
先生がおっしゃった。昔は、民に三つの汚点があった。今はあるいは欠点においてすら昔の良さは失われてしまったのだろうか。昔の人の「狂」心が遠大すぎるという欠点は、しかしのびのびしている美点でもあったのだが、今の人の「狂」は単に無遠慮でやりたい放題やっているだけだ。
昔の人の「矜」きまじめすぎることは、しかし折り目正しい美点でもあったのだが、今の人の「矜」は怒って人に争うというしまつだ。
昔の人の愚かさは、しかし正直さという美点でもあったのだが、今の人の愚かさは人を騙すだけだ。
語句
■三疾 三つの汚点・欠点。 ■狂 心が遠大すぎること。 ■肆(し) のびのびしている。 ■蕩 無遠慮でやりたい放題。 ■矜 きまじめすぎること。 ■廉 折り目正しい。 ■忿戻 怒って人と争う。 ■直 正直。 ■詐 人を騙す。
前の章「鄙夫は与に君に事うべけんや」|次の章「巧言令色鮮なし仁」
現代語訳・朗読:左大臣光永