曾子、疾あり。

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曾子有疾、召門弟子曰、啓予足、啓予手、詩云、戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰、而今而後、吾知免夫、小子、

曾子、疾(やまい)あり。
門弟 子を召(よ)びて曰わく、予(わ)が足を啓(ひら)け、予が手を啓け。
詩に云(い)う、戦戦兢兢(せんせんきょうきょう)として、
深淵に臨(のぞ)むが如(ごと)く、薄冰(はくひょう)を履(ふ)むが如しと。
而今(いま)よりして後(のち)、吾免(まぬが)るることを知るかな、小子。

現代語訳

曾子が病にかかった。弟子たちを呼んで言うには、
「布団を開いて私の足を見よ、私の手を見よ。

(どうだ完全だろう。少しも損なわれてはいない。
身体髪膚これを父母に受く。敢えて毀傷せざるは孝のはじめなりと
『孝経』にあるが、私は死ぬまで五体満足だったので、
親孝行をしたのだ。諸君も親からもらった体を大事にするように)

恐る恐る深い淵を覗き込むように、
薄い氷の上を歩くように、
それくらい命を大切にせよと詩にはあるが、
今後は、私はもうそんな心配をしないでもいいようだ。
(もう死んでしまうのだから)なあ諸君」

語句

■曾子 ■予が足を啓け、予が手を啓け 曾子は常日頃から、体は父母に与えられたものだから、傷つけるのは親不孝だと考えていた。それが死ぬ間際になって、体が完全な状態であり親孝行をしたことを、弟子たちに示したのである。『孝経』に「身体髪膚これを父母に受く。敢えて毀傷せざるは孝のはじめなり」という言葉があるが、曾子はこの精神を実践したのである。■門弟子 曾子の弟子。 ■戦戦兢兢として深淵に臨むが如し 「詩経」小旻篇・小宛篇より。■啓く 布団を開くこと。
 

現代語訳・朗読:左大臣光永

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